前巻の『残酷号事件』が出てから約7年ぶりに<戦地調停士>シリーズの新作が出た。もっとも『残酷号事件』からしてその前の『禁涙境事件』から4年経って出たのだから、そのことを考えると、次第に刊行ペースが伸びていってしまうのは仕方がないかもしれない。
ただ、さすがに7年も経ってしまうとシリーズも中断してしまったのではないかと思ってしまうし、読む方も半ばあきらめの境地に立ちそうにもなる。これで、次の巻の題名が予告さえされていなければ完全に諦めもつくのだが、京極夏彦の<百鬼夜行>シリーズと同様、次の巻の題名が予告されているので困ってしまう。
ということで『残酷号事件』にて予告されていた『無傷姫事件』がめでたく出版された。
その名のとおり、あらゆる攻撃を受けても傷を負うことの無い無傷姫の謎をめぐる物語かとおもいきや、そういった方向へとは物語は向かわなかった。
歴代の無傷姫のエピソードを連ねることによって、今回は七海連合の成立に至るまでの物語と、過去の作品に登場した様々なエピソードに対する補足といった、この世界の歴史が描かれていく。
というわけで読者に対して与えられる謎らしい謎というのはほとんどなく、終盤に至って、そこが謎だったのかと初めてわかるくらいの事柄なのだが、そういった直接的な謎とその解明の部分よりは、この世界の有様が少しずつ明らかになっていくその過程の部分も一つの謎解きであり、続く次の物語が読みたくなるだけの魅力を兼ね備えている。
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