いまさら桑田次郎か、と思うひとも、というか桑田次郎って誰、と思うひとのほうが多いかもしれないけれど、電子書籍化されていたので読むことにした。
というのも表題作の「囚人船」は傑作だという話を聞いていたからだ。
この本に収録されているのは「囚人船」と「月と戦う」(初出時は「月は地獄」)の二篇。どちらも1969年の作品なのでいまから50年ほど昔の作品なのでさすがに古びている部分もあるが、その一方で今でもまだ洗練されたと感じられる面もある。
「囚人船」は有罪となった犯罪者は金星に送られてそこで重労働をさせられるようになった未来、一人の犯罪者が金星に送られることとなるが、一方でその犯罪者を金星に送るロケットの乗組員の一人がその犯罪者に父親を殺された息子だった。息子は復讐を企てようとするが、犯罪者はといえばなぜか自分の罪を認めそしてロケットの船長もなにかとこの犯罪者に温情を見せている。そんななか様々な事故が起こり、そしてロケットの乗員たちが次々と亡くなっていくなか、犯罪者は自分を親の仇だと思っている息子のこと助けようとする。ラストはロバート・A・ハインラインの「地球の緑の丘」を彷彿させるラストでひょっとしたら桑田次郎はこの話にインスパイアを受けて描いたのではないかと思う。
続く「月と戦う」はロバート・キャンベル・ジュニアの「月は地獄だ」を換骨奪胎したような話で、月面調査隊のロケットが爆発し、地球に帰る手段を失ってしまった調査隊が月面基地で地球からの救難隊が来るまで生き延びようとするサバイバルなんだけれども、根本的に登場人物たちを助けようとするつもりがないのか、次々と調査隊の面々は死んでいく。サバイバルの方法に関してはさすがに時代を感じさせるけれども、サバイバル物としてはこの無慈悲さがなかなか新鮮だ。
『囚人船』桑田次郎

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