これまでに読んだ柚木麻子の小説の登場人物は容姿端麗とまではいかなくても普通かそれよりちょっと上かちょっと下くらいの容姿の持ち主として描かれていたけれども、今度の小説はそれよりも遥かに下、デブでブスでさらには性格も悪く、ニートで引きこもりの女性が主人公だ。
働きもせず、一日中部屋で何をしているのかといえばスナック菓子を食べながらネットで気に食わないサイトを見つけては悪口を書き込むことをしている毎日。
目下のところは、「嘆きの美女」という美女のお悩みサイトを標的にしてそこに書かれている相談事に対してことごとく嫌味を書き続けることを楽しみにしている日々なのだが、このサイトの運営者がオフ会を開くということを知ったため、それまでに培ったネット上のあらゆる技術と知識をフル動員してそのオフ会の場所を突き止め、そしてそこに集まった面々の写真を撮って晒し者にしてやろうとする。
しかし、交通事故に会い、その結果「嘆きの美女」の運営者に助けられてさらにはその運営者が小学校の同級生で、しかもモデルをやっているくらいの美女だったという結果となりさらには両手両足の骨折の大怪我だったために彼女の家で面倒を見てもらう羽目になる。
美女ばかりの中にブスが一人という設定は現実離れした設定でもあるけれども、これも一種のファンタジーと見れば気にならないし、主人公のルサンチマン丸出しのパワーと意外な部分での純情さは読んでいて微笑ましく、どんな状況でもぶれない生き方をしているので、ついつい主人公を応援したくなる。傑作というわけではないけれども、後味は凄くいい。
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