追憶の夜想曲

弁護士版ブラック・ジャックとも呼ばれる<御子柴>シリーズの二作目。
しかし、ブラック・ジャックに例えられるけれども、前作では死にかけるし、そもそも作者の弁によれば最初は死なせてしまう予定だったらしく、今作では死にかけることはないけれども社会的に死にかける。
手塚治虫が描いたブラック・ジャックは金にはうるさいけれども結構人情的で読む方としては悪徳という印象はなく、作中では悪徳医者と呼ばれながらも殺されかけるようなことはほとんどない。
それに対して二作目にしてここまでやるのかというくらい絶体絶命的な状況に追い込まれ、三作目は既に書かれているので、読み終えて主人公である御子柴がどういうふうに生き延びたのか気になってしまうのはあざといくらいにうまい。
物語の方は、弁護する相手がすでに犯行を自供しており、一審判決は下り、控訴したところから始まる。
どうあがいても無罪とは成り得ず、刑の軽減を狙うしかない状況というリーガル・サスペンスで、検察側とのやり取りの部分が面白いのだが、その部分が面白いなと思っていると終盤に足元をすくわれる。ある意味気持ち良いくらいのどんでん返しなのだが、そのひっくり返った先の真相は吐き気がしそうなくらいに気分の悪い真相で、毒を持って毒を制すというわけではないけれども、御子柴というキャラクターの造形がかろうじて後味の悪さを中和してくれる。

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