気がつくとかなり長い間、阿部共実の新作が出ていなかった。
『死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々』というやたらと長い題名の作品の二巻が出たのが2015年12月で、少しずつ発表ペースが落ちてきていたとはいえ一年以上、新刊が出ないというと大抵の場合はもう二度と出ないという意味に近い。
まあそれはともかくとしてこうして新作が出たのだからありがたい。
で、今回はというとド直球である。
今までは短編が主体だったせいもあってかギャグを踏まえた上での、突然のシリアスな話という緩急というか落差の激しさが突き刺さっていたのだが、今回はギャグはない。
小学生から中学生になった瞬間からいきなり大人びてしまった友人達に戸惑いながらもあくまで小学生からの地続きなままの自分を貫き通す主人公。成長していないといえばそのとおりなのだが、中学生になった瞬間からいきなり成長するのかといえばそっちのほうがおかしい気もする。
しかし、中学生になっても小学生のころと行動パターンや言動が変わらない主人公は友人たちから子供扱いされたままであり笑いの対象でもある。
そんな主人公の言動を見て笑ってしまう自分もまた中学になって、いきなり成長してしまった人間なのかもしれない。
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