人形は指をさす

あるアパートの一室で天上からつるされた一体の遺体が見つかる。
その遺体は6人の体から切り取られた人体で構成されていた。
つまり、頭、両手、胴体、両足のそれぞれが異なる人の体の一部なのだ。
そして吊るされた遺体の腕はその部屋の窓越しに見える主人公、ウルフ刑事の部屋を指差していた。一方、ウルフの元妻の元に、一通の手紙が届く。そこには6人の名前と彼らが死ぬ日時が記されており、そのリストの最後にはウルフ刑事の名前が書かれていた。
なんともド派手なシチュエーションである。さらには物語冒頭で、4年前に起こったある事件の裁判の場面が描かれる。27日間で27人の人間が焼き殺されるという事件であり、その裁判で犯人とされる人物は無罪になる。
もうお腹いっぱいの設定だ。
遺体をつなげて一体の体を作るというと島田荘司の『占星術殺人事件』を彷彿するが、あれとはまったく異なる展開をする。
6人の殺害宣告された人たちをいかにして守るか、そして犯人は誰なのかという部分が焦点となるのだが、ここでも作者は出し惜しみなくド派手な手を繰り出してくるのだ。
さすがにちょっとやり過ぎというか、無茶すぎるよなあと思う部分もあるのだが、それなりに説得力は持っているのであまり重箱の隅を突っつくようなことをしなければ充分に楽しめる。
問題は犯人の意外性の部分で、残念なことに意外過ぎる犯人なのだ。つまり、登場人物一覧には載っていない人物が犯人で、そこのところが惜しい部分でもあるのだが、犯人の犯行動機も含めて久しぶりに思いっきりエンターテインメントな小説を読んだという気持ちにさせてくれた。

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