ロッタレイン

松本剛の作品は読んだことがなかったが、今回の作品『ロッタレイン』はちょっと気になっていた。
電子書籍で本を読むようになってから、収納場所の悩みが無くなってしまったので買う本の量が増えた。
しかし読むスピードも増えたわけではないので必然的に読んでいない本の数も増えていく。
そんなわけなので、気になったからといって後先考えずに買ってしまうと、結局読めないままほったらかしになってしまうので躊躇していたのだが、公式サイトで1話と2話の試し読みができたのでついつい読んでしまったら、気がついたら一巻を買ってしまっていた。
一巻だけしか買わなかったのはとりあえずそこで理性が働いたというのと、電子書籍であればいつでも買うことができるという安心感のせめぎ合いの結果だ。
主人公の入院場面から物語は始まる。
バスの運転手だったのだが、上司のパワハラと付き合っていた彼女が実はその上司と出来ていたという二重の悲劇によるストレスで事故を起こしてしまったのだ。
両親は幼いころに父親の不倫で離婚して、母親と二人で暮らしていたが、その母親も他界。孤独な身となった主人公の元に、自分を捨てていった父親が現れ、一緒に暮らさないかと言ってくる。
父親は不倫相手と結婚し、相手の連れ子の長女とその後に出来た長男との四人ぐらし。父親の不倫相手は父親を奪ってしまったことを謝罪する気さくな人だが、中学一年の長女は突如自分たちの生活の中に踏み込んできた主人公に対して複雑な感情を抱く。
というのも、近隣の人たちは彼女たち一家の過去も知っていて影で噂をしているのを知っているからだ。そこへ父親が捨てていった主人公がやってくるのである。
しかし、それはあくまで基本設定の部分で、主題は別にある。
主人公と長女は血の繋がらない兄妹。そして複雑な感情はいつしか恋に変わっていく。
そして主人公は30歳、長女は中学一年生。
どう考えてもハッピーエンドには結びつかない、いや結びつけるのには難易度の高い恋愛である。
長女が主人公を好きになっていく過程がすごくうまい。そして主人公たちが破局に向かっていく過程がすごく切ない。
主人公は長女が高校を卒業するまでは兄妹でいよう。そしてそれ以降に一緒に暮らそうと言う。しかし、現実はそれを許してはくれない。
中学一年という女の子の気持ちと時間は主人公が考えるほど確定された気持ちと時間ではなく、6年という年月は主人公にとって残酷な年月となるだろうと指摘される。そのとおりだろう。
父親に捨てられ、母親も亡くし、恋人にも捨てられた主人公はそしてまた、愛する人を失ってしまうのであろうか。
読み手に委ねられた結末はうつろいはかなく、そして多分、ハッピーエンドになるのだろう。

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