ホラー系の話は苦手なのであまりアンテナを貼らずに情報は取り込まないようにしているのだが、それでもときどき面白そうなものは目に入ってくる。
オガツカヅオもたまたま目に入った情報のひとつで、ホラー漫画を描く作家なんだけれども、その漫画がどうも僕好みの漫画らしくってとりあえずWEBで公開されている「よふさぎさま」を読んでみたらピンポイントに近いかんじで好みの話だったので電子書籍化されている『りんたとさじ』を買った。
一話完結の連作短編集で、見える人である大学生のりんたとその彼女、さじの二人が主人公。りんたは見えるだけではなくそれに対しての対処方法も知っていて時々、不可思議な出来事に対して対処することをしている。いっぽう、さじの方は普通の人なのでりんたに巻き込まえるような形で不可思議な出来事に関わる一方で、関わり続けていることによって少しづつ影響を受けて、時々、見えるようになったりする。
例えば「鳴く人」という話では、りんたの友人が飼っていた猫の葬式の場面から始まる。友人の奥さんは臨月のため参加はしていないのだが、同時に友人は奥さんのためを思って猫が亡くなったことを奥さんには内緒にしている。しかしそれから数日後、りんたたちは奥さんと町で出会い、そこで奥さんが猫が亡くなっていることを知っていることを知る。一方、友人の方は猫の骨を納めた骨壷を掘り返している。
骨壷を取り出したところへりんた達が登場する。そしてこう言うのだ。その壺の中に入っているのは猫ではないだろうと。
友人は話し始める。
猫は三年前に亡くなっていて、この中に入っているのは自分たちの子供なのだと。
臨月間近でも仕事をしていた奥さんは頑張りすぎて倒れて、そして気を失っている間に流産してしまった。彼女はそのことを知らず、自分はまだ妊娠したままなのだと思いこんでいる。
そこまででも悲しい話で読み応えがあるのだが、そこからホラーに一気に転換する一捻りが入る。
その瞬間にそれまでの伏線が一気に回収され、ああ、なるほどと納得する。
怖いけれども、怪異を納得させるリアルが構成の妙と会い重なって割り切れない話でありながらもすっきりする形で終わる。
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