『パルプ』チャールズ・ブコウスキー

世の中幼稚園じゃないんだぜ、ジャック。

かなり昔に新潮文庫で出た時に買ったもののそのまま積読にしてあった。
その頃はブコウスキーなんて好みじゃなかったけれども、それでも買ってしまったのはタイトルが『パルプ』で探偵ものであり宇宙人も登場するという何でもありの内容だったからだが、だからといって買ってすぐに読むわけでもない。
結果として、ちくま文庫から復刊されて、今度こそはと再び買ったはいいけれどもやっぱり積読にしてしまって、それからしばらくして『ありきたりの狂気の物語』も復刊されてこれも買い、こちらのほうをなんとか読むことができたのでその勢いに任せて読むことが出来た。
とそんな風に書くと、随分と気合を入れなければ読むことができない本のようにも思えるけれども、全然そんなものではなく、単に個人的な事情にすぎない。
とりあえずブコウスキーの小説としては読みやすい。『ありきたりの狂気の物語』は短編だったからまだいいけれども、あの感じで長編だったら読む方もちょっときついかなと思うのだが、どこをどう切り取ってもブコウスキーというか主人公は探偵だけれども飲んだくれでいい加減でいつものブコウスキーの主人公だ。
で、私立探偵を開業しているので彼のもとにさまざまな人々が依頼に来る。来るものは拒まずで、というか仕事をしなければ生活が成り立たないので全て引き受けるのだけれども、はたして解決できるのか、読んでいる方が心配になってくる。
そもそも主人公の探偵としての能力が信用できないのだ。
というわけである意味信頼できない語り手による物語は読んでいる方がハラハラしっぱなしなまま突き進んでいくのだが、依頼者の一人は死神だったり、宇宙人が関わっていたりと話は収束に向かうどころか拡散していく一方である。
それでいて最後はわりときれいに、というかブコウスキーの物語らしい形で収束していくので満足することができる。一般的ないミステリとしての収束を期待するとがっかりするだろうけれども、ミステリとしての収束とブコウスキーの物語としての収束との両方を兼ね備えた結末なのだ。

とにかく、みんなに行き渡るだけの金なんてありゃしない。あったためしなんかない。どうしたらいいのか、俺にはわからない。

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