ジェフリー・ディーヴァーは、どんでん返しが鼻につき始めてしまったのと、面白いけれどもボリュームがありすぎるせいで読まなくなってしまったが、ジャック・カーリイはディーヴァーと比べると完成度という点では少し落ちるかもしれないけれども、完成度は二の次にしてまでもの変化球と文庫にして400ページほどという適度なページ数でまとめてくれるという点が僕にとってはありがたいので読み続けている。
今回は主人公と犯人側との物語が交互に語られていくのだが、連続殺人を扱っていながらもその繋がりが見えないというミッシングリンク物。とはいえども犯人側の視点によって、犯人の目的は警察に対する復讐であることはわかる。犯行動機がわかっているので、被害者がランダムに選ばれていたとしてもそれほど不思議ではないのではないだろうかと思うのは僕だけだろうか。
被害者の繋がりがないままに犯人がランダムに殺人を犯していくというのは、いわば通り魔殺人で、それゆえに作中でも主人公によってそのことが指摘されるのだが、警察側としては犯人を逮捕するのが非常に困難になる。
しかしそうなると物語としては成立しにくく、なんらかの幸運に恵まれない限り犯人にたどり着くことができないという状況はあまりよくない設定でもあるのだが、ジャック・カーリイは終盤でそれをはねのけてしまう。とはいえども、そこで明らかになるミッシングリンクはコーネル・ウールリッチの作品にも見られた前例のある繋がりなのであまり驚きはなかったのだが、真の驚きはその後にあった。
振り返ってみるとたしかにそうとも読み取ることができるような書き方がされていて、ミッシングリンクの謎なんてのはこの真相を隠すための囮のようなものだったのではないかとも思ってしまう。そして犯人は逮捕されるのだが、最後に明らかになる真相に対しては主人公は気が付かないまま終わるのだ。次回作ではその後が明らかにされるのか気になるところだが、翻訳が飛ばされてしまった前作も翻訳してもらいたいことろだ。
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