ディック・フランシスのデビュー作。
電子書籍版を買ったけれども、この電子書籍版の『本命』は評判が悪い。というのも誤植が多すぎるからだ。おそらくOCRにかけてテキストデータ化したと思われるのだが、その際にろくに校正をしなかったせいだろう。
とはいえども、おおよそ元の言葉は推測できるので、それほど差し支えはない。
イギリスの競馬の世界を舞台としているので日本の競馬をイメージするとだいぶギャップがある。そもそも障害物があるレースであり、しかも霧が発生して障害物がその手前まで来ないとわからないくらいな濃霧の中でさえレースを行うという世界なのである。
本命と言われた馬が障害物を飛び越えようとして突然転倒し、乗っていた騎手が死亡してしまうところから物語は始まる。
主人公は騎手でその馬のすぐ後ろを走っていた。さらに死亡した騎手は彼の親友で、転倒事故の不自然さを不審に思った彼は密かに調査する。
途中で主人公の恋愛が絡んできたり、犯人側の妨害、デビュー作には全てが詰まっているといわれるが、まさにそのとおりで、確かに面白い。
ディック・フランシスはシリーズ・キャラクターをほとんど作らず、毎回異なった人物を主人公とした物語ばかりなので、デビュー作から読まないといけないということはないけれども、後の作品よりもデビュー作を傑作にあげる人が多い理由もよくわかった。
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