小説家の日常を描いた漫画なのだが、そもそも主人公は純文学作家で、だからというわけではないのだが売れっ子というわけではない。
小説を書くだけでは生計を立てることなどできないので警備員のアルバイトをして、その合間に作品を書くということをしている。
なにか劇的なことが起こるわけでもなく静かに物語、いや彼の日常は過ぎていく。
ただ、彼の日常はつねに創作と寄り添っていて、というか生きていることそのものがものを書くということと一体化しているので描かれる事柄も自然とそういうものになっていく。
そのこと自体が目新しくもあり新鮮でもあるのだが、どことなく既視感もある。といっても自分自身のことではない。
途中で主人公たちが「たほいや」という遊びをする場面が登場する。辞書から適当に言葉を選び、参加者はその言葉の意味をでっち上げるという遊びだ。どこかで似たような話を読んだことがあるなと思ったら長嶋有の『ねたあとに』で登場人物たちが似たような遊びをしていたのを思い出した。
そうか、既視感があったのはこの漫画の雰囲気が長嶋有の小説の雰囲気と似ていたからだったのか。
活字で描かれる世界を絵に変えるとこんなふうになるのかもしれない。
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