『その女アレックス』ピエール・ルメートル

面白いと評判になったのは知っていたが、積読本が多すぎて、後回しにしていたけれども、電子書籍化され、バーゲンセールで安くなっていたのでとりあえず、買って、そのまま積読にしておいたのをようやく読み終えた。
日本では先にこちらが翻訳されたのだが、実際はシリーズの二作目で、一作目は『悲しみのイレーヌ』。
で、二作目であるこちらを読むと一作目のネタバレがあると知ったのは後の祭りだった。
あまり事前情報を仕入れなかったのが失敗でもあったが、そもそも、翻訳されると同時に読んでいたとしても、同じことが言えるので、まあ仕方がない。
アレックスという名の女性が何者かに誘拐されるところから物語は始まる。
誘拐したのは誰で、何が目的なのか。
アレックス視点の話と交互に語られるのはアレックス誘拐事件を捜査する警察側の話だが、警察のほうも手掛かりに乏しい。なにしろ、誘拐されたのが誰なのか皆目見当もつかない状態なのだ。何者かによって女性が連れ去られたという状況を目撃した人間によって警察に通報があり、そこから警察が動き出しただけで、被害者の知り合いからの通報ではないのである。
そんな手掛かりに乏しい状況で果たしてアレックスを見つけることができるのだろうかというサスペンスの中、誘拐犯は割と簡単に見つかるのだが、アレックスの監禁場所を言う前に車に引かれて死んでしまうといった予想外の状況が発生する。一難去ってまた一難である。
このように次から次へと読者の予想を覆す展開の中、一番のどんでん返しはアレックスという女性自身にあり、最初は被害者でありながら途中から加害者になり、さらにはそれもまた逆転していく。
どんでん返しのふり幅が大きいのである。
確かに面白い小説ではあったが、警察側が取った最後の方法は、法よりも正義であり、それは読者としては共感できるが、しかし、警察側が法よりも正義を取るということに、ほんとうにそれでいいのか、というかそれをやってはいけないだろうと思った。

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