戸田義長『吉原面番所手控』

吉原遊郭を舞台にし、そこで起こった殺人事件を描く連作短編集。
冒頭のエピソードで夕鶴という花魁の心中事件が語られ、そこから同心が関わった事件の回顧録が始まるのだが、そこで事件の謎を解くのは夕鶴。名探偵がすでに死んでいるという事実が個々のエピソードの根底に流れているせいもあり、同時に舞台となるのが遊郭であり、どの事件も悲しさが伴う。
しかし、驚くのはおそろしく本格ミステリとなっている点で、雪密室、ダイイングメッセージ、現場の見取り図、と本格ミステリの意匠がこれでもかと使われる。なかでも、なんらかの状況で犯行現場が密室になっている事件が多いのも密室好きとしては嬉しい。さらに「まだらのひも」なんて言葉がダイイングメッセージとして使われていて、楽しい。横田順彌ファンとしては別の意味で「まだらのひも」の真相を知ったときには楽しめる。
動機や犯行手段が遊郭であることが前提となっている点もうまくできている。四番目の話は都筑道夫の某短編を思い出した。
そして回顧の終りに夕鶴の心中事件の真相が語られ、さらにそのあとにもう一つエピソードが入ることで夕鶴という人物像がより深く浮かび上がる。

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