- 著 ロバート・チャールズ・ウィルスン
- 販売元/出版社 東京創元社
- 発売日 2008-10
- 著 ロバート・チャールズ・ウィルスン
- 販売元/出版社 東京創元社
- 発売日 2008-10
その昔『世界の秘密の扉』を読んだとき、恐ろしく地味というか、悪いところは何もないけれども抜き出たいいところも何もない話だったなあということを思ったので、その後でもう一冊出た時には読むことはなかった。
で、そのロバート・チャールズ・ウィルスンの作品がまた翻訳されると知って驚いたのだが、その作品がヒューゴー賞受賞作としってさらに驚いた。どちらかといえばネビュラ賞の方向きの作家だと思っていたからだ。
でもって『時間封鎖』のSFネタの内容を知ってさらに驚いたわけだが、『世界の秘密の扉』の作風のままでこんなネタを扱えるのだろうかと不安になった。しかし、読んでみるとなるほどなっとくなわけで、主人公と幼なじみの二卵性双生児の物語になっているのである。
得体の知れない膜に包まれてしまったために、地球では一年経過するうちに膜の外では一億年も経過してしまうという恐ろしいほどの時間差。
一対一憶なんて、数が大きければいいってもんじゃないよと思うのだが、これがなかなかどうして、はったりで一億なんて設定したわけではなく巧妙に計算された設定値となっている。
四十億年ほどすると太陽の寿命が来て、巨星化した太陽に地球も飲み込まれてしまうのである。そこでその状況を打破するために火星のテラフォーミングが計画されるのだが、そのあたりは下巻のあらすじに書かれているので、上巻ではそこに至るまでで、下巻がその後の話だなと思っていたら驚いた。
上巻の中盤ではやばやとテラフォーミングが行われるのだ。しかも一対一憶の時間差なのでテンポよく進む。説得力を持たせるための冗長的な描写など一対一憶の時間差の前には全く必要がないのだ。実に美味しい部分だけ描写していって、そしてテラフォーミングが完了する。
では、下巻ではどんな展開がまっているのだと思っていたら、その後で予想もしない展開が待ち受けていた。まったくもって何度も驚かされてしまう話だ。
まあ、それはともかく下巻に入ると異星の客が登場する。ああ、こんなことだったならば読んでおけば良かったよと後悔したりもするのだけれども、そこは抜かりのない作者。読んでいなくっても別に平気だ。というか異星の客だったならば読んでいて当たり前だろうという前提なのかもしれないが、あくまでさりげなく、慎ましく、そして大胆にハインラインにオマージュを捧げている。
異星の客が去ったあとは終末SFである。僕の大好きな終末だ。
巨星化した太陽のすばらしさ。ここでもやはり大当たりの年を念頭にして描いたのかも知れないが、そこはかとなく過去の作品群の美味しい要素を取り込んでいたりして全く持って抜かりのない作者だと感心してしまう。
コメント
やはり、面白そうな内容ですね。
時間ものだと思うので買おうか迷っていました。
なにせ上下巻で2000円!
図書館で借りるかもしれません(^^;)
>時間ものだと思うので買おうか迷っていました。
うーーん、とりあえず時間の流れが地球上だけ極端に遅くなるだけ
なので時間ものかというと、そうではないです。
>なにせ上下巻で2000円!
文庫なのにハードカバー並みの値段ですよね。
しかし、値段分は楽しんだので満足はしています。