- 著 張 系国/
- 販売元/出版社 国書刊行会
- 発売日 2007-05
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長編かと思っていたら短編集でした。
明確な繋がりは無いものの、いくつかの短編では共通の設定が登場したりするので、『星雲組曲』という題名からして全体としては共通の世界史となっているのかも。
個人的には非常に懐かしい感じのする話が多く、今日泊亜蘭の『まぼろし綺譚』を読んだときと同じ薫りがしました。
台湾でSFが読まれるためには台湾の文化に即した物語でなくてはならないという作者の言葉どおりというべきか、この物語たちが書かれた当時、台湾でSFというものがまだ根付いていないのだとすれば今日泊亜蘭と同じ薫りがしたとしても不思議ではありません。
オチが強烈だとか、奇抜な発想の話というのは無く、印象に残るのは感傷的な話のほうなのだけれども、作者の思想的部分が面白いのです。
脳に小型の受像器を埋め込み、受信した仮想世界を楽しむようになった未来、文学や詩などの本はほとんど書かれることがなくなり、それを憂いた人々がそのシステムを破壊しようとする。ブラッドベリが書いたのであれば主人公たちは文学を取り戻して万歳、もしくは失敗して嘆く話になるだろうけれども、主人公はなんと廃れるものは何をしても廃れるのだと文学の方を否定してしまうのです。
西洋の物語が文化的な側面から、90%は理解できても10%は理解出来ないとした場合、この本は90%は理解できて、残りの10%も理解できる。ただ90%の部分と10%の部分が何故組み合わさるのか理解できない。そんな感じの話でした。
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