大失敗

大失敗

  •  スタニスワフ・レム/
  • 販売元/出版社 国書刊行会
  • 発売日 2007-01

Amazon/Bk1/楽天ブックス
「失敗する可能性のあるものは、失敗する」というマーフィーの法則みたいな話。
それにしてもやたらと密度の高い小説で、読み終えるのに時間がかかりました。悪くいえば偏執狂的、良くいえばストイックでもあるけれど、読みながら、なんでここでこんな話が飛び出してくるのだと驚くことがしばしば。もちろん何の意味もなくそんなことが書かれるわけではなく、むしろそこまで書かなければ話を進めることができないのかこの人は、と呆れるやら感心するやら。
長編数冊分のアイデアをつぎこんで、哲学、医学、物理学などのペダントリーで武装するのがワイドスクリーン・バロックの方法論であるのだけれども、同じ事をしているのにワイドスクリーン・バロックとは遙かにかけ離れた場所に位置しているのは不真面目な部分が無いせいなんだろう。
しかし、不真面目な部分が無いにも関わらず、そしてレム自身も真面目に書いていただろうにも関わらず、やることなすこと全てが裏目に出てどうしようもなくなっていく様は読んでいて思わず吹き出してしまったよ。ああ、不真面目な読者で申し訳ない。
巻末の用語解説の一番最後に「Sezam」という短編の紹介があって、それがフレーム問題の話だったこともちょっと驚いた。いやレムがこの問題を扱っていたことは全然不思議でもなんでもないんだけれども、人工知能に癌の治療方法を考えさせるという話で、その答えがバリントン・ベイリーの「光のロボット」のいちエピソードと同じだったので驚いたわけですよ。
つくづくレムという人は凄い人だったんだなあと思い知らされました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました