I.カルヴィーノ著 / 米川 良夫訳
大帝シャルルマーニュの元に集った騎士達の中にアジルールフォはいたが、彼は鎧だけの存在、不在の騎士だった。
シャルルマーニュというとSF者の私はラファティの「われらかくシャルルマーニュを悩ませり」を思い出してしまいますが、イタロ・カルヴィーノの「不在の騎士」も愉快な小説。
鎧だけの存在というのは微妙に間違っていて、彼の鎧はあくまで鎧に過ぎなく、強い意志だけがそこに存在しているといった方が近いです。そして大帝シャルルマーニュの気まぐれによってアジルールフォの従者となるグルドゥルーは肉体は存在するけれども意志が不在の人間。
二人合わせてようやく一人前の人間になるかと思いきや、話はそんな方向には向かいません。ある時、アジルールフォは騎士の資格を疑われ、その存在を確かめるための遍歴の旅へと出かけます。はたして物語の顛末は…。
途中から物語の語り手が登場するのですが、語り手は修道女。アジルールフォの物語を紡ぎ出します。彼女は紙の上に森を描き、川を描き、そして線を引くと登場人物達がその線に沿って動き出し、不在の騎士の物語へと移っていくのです。この、語り手の世界から物語の世界へと移っていく部分が素晴らしい。物語と戯れているって感じです。
シャルルマーニュというとSF者の私はラファティの「われらかくシャルルマーニュを悩ませり」を思い出してしまいますが、イタロ・カルヴィーノの「不在の騎士」も愉快な小説。
鎧だけの存在というのは微妙に間違っていて、彼の鎧はあくまで鎧に過ぎなく、強い意志だけがそこに存在しているといった方が近いです。そして大帝シャルルマーニュの気まぐれによってアジルールフォの従者となるグルドゥルーは肉体は存在するけれども意志が不在の人間。
二人合わせてようやく一人前の人間になるかと思いきや、話はそんな方向には向かいません。ある時、アジルールフォは騎士の資格を疑われ、その存在を確かめるための遍歴の旅へと出かけます。はたして物語の顛末は…。
途中から物語の語り手が登場するのですが、語り手は修道女。アジルールフォの物語を紡ぎ出します。彼女は紙の上に森を描き、川を描き、そして線を引くと登場人物達がその線に沿って動き出し、不在の騎士の物語へと移っていくのです。この、語り手の世界から物語の世界へと移っていく部分が素晴らしい。物語と戯れているって感じです。
コメント