将棋の羽生善治が人工知能に関してNHKの番組でかかわったものを書籍化したもの。
人工知能に関してはブームなのでたくさんの本が出ているが、個人的にはもう食傷気味である。というのも昔からSF小説が好きで、人工知能はSF小説の中で様々な形で登場し、そして未来の世界を描いてきた。なので今更感というものがある。
その一方で、人工知能の世界とは無縁のように見える羽生善治が将棋ソフトといったレベルだけではなくその大枠の人工知能というレベルでどういう風に考えているのかということには興味があった。
専門書ではないので、人工知能というものに関しての知識が全くなくても読むことができる。その一方で専門書では書かれることのない、人工知能と人との関わり合いという部分に関してはなかなか興味深いことが書かれていた。
とくに、将棋の世界において、情報がたやすく入手しやすくなり、新しい手が生まれても昔よりも短期間で攻略方法が見つけられてしまうという時代になっていて、情報を得るのはたやすいが、得られる情報量は膨大で、結局その情報を自分のものにするだけの時間がなくなってきているのではないかという考察は興味深い。
今の人工知能もそうで、学習することはできるが、必要でないものを見極めることはできていない。必要でないものを捨てるということができなければ、おそらく知識を得たとしてもその知識に翻弄されるだけで終わってしまうのだろう。
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