『水上悟志短編集「放浪世界」』水上悟志

水上悟志の漫画を読むのはこれが初めてだ。
この本に収録されている「虚無をゆく」がWEB上で無料で公開されていた時にそれが評判だったので読んでみて驚いた。
主人公はとある団地に住む少年。どこにでもある普通の団地でどこにでもいる普通の少年の話として始まったこの物語は、開始早々、いきなり読者を驚かせる。
団地の空の上に巨大な怪魚が出現し、さらにはその怪魚に対して巨大なロボットの腕がパンチをお見舞いするのだ。そして怪魚は倒される。
74ページという紙面の中で矢継ぎ早に意外な事実が明らかにされ、ごく普通の団地だった世界がそう見えるのはごく一部、つまり少年の目でみた、いや少年の住む世界が小さかっただけでその世界の外に目を向けるとそこには広大な世界が広がっているのである。そしでそれはあまりにも広大すぎる故に、虚無といってもいいくらいの広さで、SF小説やSF漫画を読んでいると、ときどき、こういうタイプのSFに出会うことがある。
読み手の認識が追いつかないというか、想像すら難しい広大な世界を無理やり認識させられることによるゾワゾワとした感覚である。
高山和雅の『天国の魚』もそんな感じのタイプの漫画で、たまにこういう漫画を読みたくなる。

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