『猫村博士の宇宙旅行』杉谷庄吾

恒星間飛行が可能な宇宙船を開発した猫村博士は宇宙の真理の探究のため宇宙の果まで目指し、地球を出発する。というのは建前で学生時代からひたすら宇宙船開発一筋で女の子と知り合う機会もなかったことから、宇宙を旅してそこで出会った美女たちをあつめてハーレムを作るという目的が本音だった。
地球を出発した猫村博士とその助手のロボット、ポピ子は手始めに月の裏側へと向かう。月の裏側を肉眼で見た人類初めての人間になるためだったのだが、月の裏側には月人の都市が存在していた。月人は二本足歩行するウサギそっくりの姿で地球人よりも遥かに発達した文明を持っていた。宇宙の真理を知りたいという月人の科学者も仲間になって続いて一行は火星へと向かうのだが、火星にも火星人がいた。そして火星人の少女も仲間になり木星の衛星、エウロパへ。
エウロパにもエウロパ星人がいてなんだかんだいって太陽系には地球人以外にも高度な文明を持った異星人がいたことを知る。
とここまではスペースオペラのパロディのような展開なのだが、ここから少しずつハードSFへとシフトしていく。
というのも猫村博士の作った宇宙船のエンジンは小型のブラックホールを利用した推進エンジンで、重力機関航法と名付けられているがこれがなかなかおもしろい。さらには博士一行が向かう星々のビジュアル的な要素もSFは絵だねえというあの名言のとおりで、読んでいてワクワクさせられる。
重力機関による航行中の超空間内では古代マヤ人と遭遇したり、牡牛座ではソラリスを彷彿させるような知性と遭遇したりと、要所要所にギャグをかましたりして入るけれども、投入されたネタの密度は濃い。
最終的には宇宙の中心にある巨大ブラックホールを利用して一気に加速し、宇宙の果まで目指すのだが、宇宙の果がどうなっているのかという部分に関しても一つの解釈をしっかりと導き出している。
好奇心と知識欲を満足させてくれる冒険漫画だ。

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