黄色い円盤

この本に収録されている「盲脳」がWEBで公開されたときに初めてこの作家の存在を知ったのだが、そのときにはまだ単行本が出ているとは知らなかったので、というかそこまで調べなかったので「盲脳」という漫画じたいは面白かったけれども、この漫画だけが特筆していたんじゃないかと思ってそのままだった。
それから1年以上経って、この「盲脳」が収録された単行本が出た。
「盲脳」を読んでみてもらえればわかると思うけれども、ホラーである。ホラーは苦手なのでわざわざ読むということはしないけれども、それでもなぜか気になる漫画の中にホラー系の漫画がある。
「盲脳」に関していえばホラーなんだけれども、それ以上のなにかがやたらとくっついてる。なので怖がらせるつもりなんかないんじゃないかと思わせる。盲腸が人間にとって不必要な器官、もっとも最近では実は役に立っているということがわかり始めているのだが、作中においては一般的な知識と同じく、盲腸はなんの役にもたっていない器官として描かれているわけだが、これと同じ理屈で盲脳というものが登場する。そもそも脳が見た目、腸と似ているというところからその発想がきているわけだが、あらすじを書くととんでもない分量になってしまうのでやめるけれども、そのくらい密度が濃い。
この作品が一番だろうなあと思っていたのだが、それ以上に凄まじかったのが巻頭に置かれた「円盤」だった。こちらも二話までWEBで公開されている。
ホラーで円盤というとUFOのことだと思ってしまうが、ここでの円盤はなんとレコード盤である。すでになにかおかしいとしかいいようがないのだが、そこからこんどは本当に円盤が地球に飛来してくる。しかしその円盤もレコード盤そっくりである。「盲脳」と同様、おそろしく密度の濃い内容で、それでいて理路整然とそれらがわかりやすく語られていく。怖さの種類が一般的なホラーにおける怖さではなくどちらかというとSFよりの怖さだ。
終盤になると前半での無関係だと思われていた事柄が伏線として回収されていくのだが、それでもちょっとその解決の仕方は無理があるんじゃないのかと思っていると、さらにひっくり返して納得の行く形で、といっても想像の斜め上を行く決着のつけかたなのだが、しっかりきれいに終わらせてくれる。
世の中には面白い漫画を描く人がいっぱいいるんだなあと思う。

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