『ブラックジャックによろしく』で読む精神医療のウソのようなホントの現実
こんな記事があった。
僕のもう一つのブログでも書いたことがあったが、僕もこの『ブラックジャックによろしく』を読んでいた。僕が読んだのはまだ妻が発症する前、いや妻と結婚するはるか以前のことだった。
その当時はまだ、こういう病気があるという程度しか知らず、統合失調症というものがどういうものなのかということも、この漫画で初めて知ったのだが、知識があったからといっても妻が発症した時にすぐに統合失調症という病名に行き着いたかといえばそんなことはない。知識として得たけれども、それは自分の生活している世界から離れた世界のことだと思っていたからだろう。
妻が統合失調症と診断され、そして医療保護入院という形になったのだが、この漫画は読み返そうという気持ちにはなかなかなれなかった。いまでもそうである。
改めてこの記事を読んでみると、精神科の病棟の雰囲気はよく出ていると思う。妻が入院したのは閉鎖病棟だったのだが、そこにいる人たちの雰囲気はこの漫画でもよく表されている。漫画では表現するのは難しいのだけれども、どこか静かなのだ。精神科以外の病棟であれば聞こえてくる音、声が、精神科の病棟では聞こえてこない。違う音がある。
そして閉鎖病棟では、患者が勝手に外に出たりしないようにドアには鍵がかかっている。いや、そもそもドアそのものが、普通のドアではない。防護壁のような扉であり、そして常に閉ざされている。窓はもちろんあるけれども、窓の向こうには鉄格子があり、窓そのものも10センチ程度しか開けることができない。
妻の入院した閉鎖病棟がそうだったというだけなので、他の病院ではどうなっているのかはわからない。
妻は毎日、その10センチの隙間から外を眺めていた。妻にとってはその10センチの空間が、自分と外の世界をつなげることのできる唯一の扉だった。
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