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- 『カラメルキッチュ遊撃隊(1)』大石まさる
- 『カラメルキッチュ遊撃隊(2)』大石まさる
- 『カラメルキッチュ遊撃隊(3)』大石まさる
なかなか漫画を描いてくれない鶴田謙二の隙間を保管してくれるのが大石まさるだ。
そのことを本人が意識しているのかどうかわわからないけれども、<水惑星年代記>シリーズは絵柄まで鶴田謙二ふうの絵柄で、しかも7冊出してくれたので堪能することができた。
それ以降はおそらく意図的に絵柄も作風も変化させようとしているようで、鶴田謙二から脱却した大石まさるの変化は今のところ試行錯誤っぽい部分もある。
主人公が大人の女性である『ライプニッツ』も悪くないが、ここはあえてジュブナイルSFである『カラメルキッチュ遊撃隊』全3巻を選んでみた。
ある日突然、青い月が現れた時、地球上の都市が地表からえぐり取られるような形で消滅した。物語はそれから十数年後の話、都市部以外に住む人々達は少しずつ文明を復興させていたのだが、この「大消滅」以降、あちらこちらでイホージンと呼ばれる謎の生命体達があちらこちらに出没するようになる。「大消滅」とイホージンの謎を縦糸に繰り広げられる物語は、三人の少女たちの夏休みを中心としたほのぼのとした物語で、シリアスな基本設定とは裏腹に非常に良質なジュブナイル物語となっている。
主人公たちが「大消滅」の時点ではまだ赤ん坊で、「大消滅」以降の世界しか知らないというところが一つのポイントで、大人と子供との間における世代間の格差が物語の主題の一つとなっている。
最終巻では矢継ぎ早に話が進み、もう少しじっくり描いてもよかったんじゃないかとも思わせるのだが、その一方で、一気に物語を畳み込むこのスピード感と、あちらこちらに散りばめられた情報の密度の高さは、むしろやみくもに丁寧に描けばいいものではないという良い見本でもある。
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