グラデーションに魅了される

僕がよく行く書店は店の一部が文房具売場となっている。
なので、時間の余裕がある時は、買いもしないのにこの文房具売場をひと通り見て歩く。
見ていてワクワクさせられるのは色鉛筆やカラーマーカーが並べられてある場所で、全色揃えて買いたくなる衝動に駆られてしまう。
缶ケースに入った40色くらいの色鉛筆が平台の上に置かれてあって、これまた買ったところで使う機会などないのに欲しくて見とれてしまうのだが、値段表を見ると36,000円とあって、一気に現実に引き戻されてしまった。一桁見間違えたのではないかと思い、もう一度見直すが金額は間違っていない。ただ40色だと思っていたのが間違いで、実際は120色だった。3段重ねのケースだったようである。
1本あたり120円として考えると、というのは間違いで、缶ケースの値段も考慮しなければいけないのだが、本数で割りきれてしまう価格設定というのはケースの値段を考慮するのを忘れさせてしまう力があって、こういう場合は単純に割り切れない値段を付けておいたほうがいいのかもしれないな、などと思いつつも、ケースの値段を考慮したとしても、少しばかり高い気もする。
もっとも、油絵の具が色によって値段が変わるのと同様、色鉛筆も色によって値段が変わるのかもしれない。少なくとも、赤、黄、青のようにどんな種類の色鉛筆を買っても必ず入っている色と、こういう100色以上の色鉛筆の時にしか入らない色とを比べると、値段が異なっていても不思議ではない。そうなると単純に価格を本数で割った金額を一本あたりの値段として考えるのは間違っているな、しかし、今度はこの36,000円が妥当な値段なのかどうなのかさっぱりわからなくなってしまう。
そんな事を思いながら、色鉛筆で彩られたグラデーションの美しさに、今日はこれで帰るけれども、また何日かしたらこの色を楽しむためにこの場所に訪れてみようと思うのである。

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