残念なことに僕はいしいひさいちの凄さというのがよくわからない。
映画になった『がんばれ!! タブチくん!!』を見て、あまりの面白さに衝撃を受け、そこではじめていしいひさいちという漫画家の存在を知り、コミックの方も買って読んで笑い転げた記憶はあるのだが、途中で読むのが止まってしまった。
それ以降もたまに新作を読んでいるのだが、適度な距離をとっているというか、要するに夢中になるほどまで行かないのだ。
しかし、今回『文藝別冊 総特集・いしいひさいち』を読んでみてなんとなくその理由がわかったような気もする。
現在の4コマ漫画はいしいひさいちが開拓したと言われている。で、吉田戦車がその後を、ぺんぺん草一本残さないくらいに破壊した。しかし、この本を読むと、吉田戦車もいしいひさいちの影響下にあったようだ。
writer’s writer という言葉がある。
いしいひさいちはある意味 writer’s writer なんだろう。だから、読めば面白いけれども凄さが伝わりにくいのだ。
いしいひさいちは、これだけ売れていながらも表に顔を出さず、インタビューもほとんど受けず、ただ作品のみを書き続けている。昨今の情報化社会において、まったく個人の情報を出さないのではなく、少ししか出さずにすます作家というのは珍しい。作者本人による書き下ろしの「でっちあげロングインタビュー」を読むだけでもこの本を買う価値はある。
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