八杉将司の『光を忘れた星で』を読まないといけないよなあと思っていたのだけれども、なんとなくきっかけがつかめないうちにずるずると過ごしてきて、それというのも『光を忘れた星で』が文庫ではなかったというのが原因のひとつなんだけれども、そうこうしているうちに新作の『Delivery』が出てしまって、なんだかこちらの方も面白そうな話で、たまたま書店で見かけたので勢いにまかせて読んでみることにした。
ある日突然、原因不明のスーパーディザスター、ようするに超巨大な災害が地球全土にわたって発生し、人類の大半は亡くなり国家も崩壊し、世界は荒廃してしまう。その時代、人類は月の植民地化に成功しており、月側の支援もありながら少しずつ地球の復興活動が行われようとしている。
しかし、単なるポスト・ホロコースト物ではなくさまざまなSFのガジェットが投入され、物語は予想もつかない展開をしていく。
全四章から構成されているが、章の終わりで必ず主人公が意識を失うというのがちょっと愉快な点だが、それによっていったん物語がリセットされ、それまでと異なる境遇に主人公はおかれるのだ。
そもそも主人公はノンオリジンと呼ばれる遺伝子改良された新しい人類なのだが、子孫を残すことができない設計がされているために行き止まりの種族という悲しい宿命を背負っている。
次々と異なる境遇に置かれる主人公の遍歴をグレッグ・イーガン的な味付けをした物語であると同時に、地球を襲ったスーパーディザスターの謎の解明という部分もしっかりと処理し、ここまで盛り込んだアイデアをこれだけのページ数に押し込んだことで得ることが出来たスピード感は読み終えてある種の満足感を得ることが出来る。
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