桜木紫乃のミステリ。
といってもトリックやアリバイといった本格ミステリではないし、叙述トリックを駆使したミステリでもない。
意外な真相、意外な犯人ではあるけれども、どちらかといえば雰囲気は二時間サスペンスドラマ的なミステリに近い。こう書くと貶しているように見えるかもしれないが、決して貶しているわけではないのだが、物足りなさがある。
一見すると、桜木紫乃の持っている作風、手法をミステリという入れ物に入れてみたらすっぽりとうまく入れることが出来たという感じとでもいえばいいだろうか。ただ、入れることができたけれども、全部そこに入りきったわけではなく、ちょっとばかり入らなくってあまりが出てしまった。その入りきらなかったあまりの部分が、この本を読んで少し物足りないと感じた部分なのだろう。
あえてミステリというフォーマットを使わなくっても桜木紫乃の持つ世界というのは魅力的で、そして重々しく、乾いた寂しさがある。
北の大地、北海道という世界のそれは僕の知らなかった部分をまざまざと見せくれて、あたかもその地に実際に訪れて、体で感じ取っているかのような体験を得させてくれる。
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