世間での評価は高いんだけれども、あまり好みじゃなかった。
どちらかといえば『ペルディード・ストリート・ステーション』のほうが好みなんだけれども、あれもラストになってなんだか期待している方向とは違う方向に行ってがっかり感が漂ってしまったけれど、『都市と都市』もそんな感じだった。
しかし、二つの都市を同じ空間に存在させるという状態を、特別なSF的な設定など使わずに、双方の市民が他方の存在を意志の力だけで空間的に存在しないものとして認識することによって成立させてしまうミエヴィルの力業は感心するばかりだ。
さらに、普通に考えれば破綻するに決まっているこの設定を、普通ならば破綻しそうな部分は描かずに済ますところを、様々な角度から描写して破綻しそうなすれすれの部分で強引に破綻させずに成立させ続けているところなどは、確かに読んでいて楽しいし、面白い。
こうして振り返ってみると面白い話だったのだが、読んでいる最中は楽しめなかったのは一体全体どうしてなんだろうと思ってしまうが、やはり終盤の展開と決着の付け方が好みではなかったせいなんだろうなあ。
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