『天獄と地国』小林泰三

短編集『海を見る人』所収の同名短編と同じ設定同じ登場人物を使った長編なんだけれども、短編の方がどんな内容だったのかすっかり忘れてしまっていた。が、忘れてしまっていても問題はなかった。
ハードSF設定でありながら、主人公達はいつもの小林泰三の登場人物と同じく真面目なのか不真面目なのかよくわからない飄々さを持っているし、生きるか死ぬかという戦闘最中であってもひたすら論理的に会話をしてその思考を口に出してしゃべっている。
しかも、舞台となる世界の設定そのものはハードSF的であるのに対して、主人公達が発見し乗り込む古代文明が残した巨大人型兵器はドロドログチャグチャのスプラッター趣味満載で、この対比が面白い。なんでまあこんなにも嫌悪感たっぷりに描くんだろうねえ。
そして、序盤終わりから中盤にかけてはこの巨大人型兵器と同じく古代文明が残した別の兵器達との戦いがメインとなるのだが、火力戦ではなく知力戦になっているところがやっぱり楽しい。
主人公達の目的はこの世界の本当の姿を求めることにあり、終盤にようやくその目的地と思われる場所へと到達し、多大な犠牲を払いながら目指す場所へと到達するのだが、小林泰三の邪悪さは最後の最後で発揮される。うーん、これは続きを書くつもりなのかどうなのか。
しかし、「ザビタン」の「タン」の意味には脱力してしまった。

コメント

タイトルとURLをコピーしました