自分が書いた『隠し部屋を査察して』の感想を読み直していたら、この人の長編はあまり読みたくないなあ、などと書いてあって自分の記憶力のなさやら、意志の弱さやらなにやらいろいろと自分自身にがっかりした。
物語冒頭から、いかにも信頼できない語り手がうさんくさそうな語りを始めるのでメタフィクションっぽさがプンプンと薫り始める。マコーマックなので単純なミステリーやサスペンスにはならないことはわかっていたけれども、逆に、ミステリーとしてみてもかなり面白かったのには驚いた。といってもかなりひねくれているので、強いていえばノックスの『陸橋殺人事件』をさらにひねったものといえば近いかもしれない。
謎と言語に淫しているというべきか、ソシュールの言語学的な部分とか、はたしてそんな物まで盛り込む必要があるのかと思ってしまうような部分が面白かったりするが、外世界に存在する謎の解明をしていたら内世界の方の謎がいきなり表面化して謎ときの向きが180度転換してしまうあたりが凄いと思ってしまった。
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