中央公論新社

『点線のスリル』軒上泊

去年、軒上泊の『君が殺された街』が突然文庫化されたとき、予想外の驚きとうれしさがあったのだが、軒上泊の新刊が出なくなって久しいことを思うと、どうせ新作は望めないのだから、これだけ出されても蛇の生殺しみたいなものだよな、と思った。が、しかし、...
岩波現代文庫

『牛 築路』莫言

わたしが莫言を知ったのは『四十一炮』が翻訳されたときだからそれほど昔のことではない。しかし、見知らぬ作家の上下巻の四六判の本をいきなり買うのは躊躇してしまったわけで、かといって手軽に読むことが出来そうなの莫言の他の本も無く、文庫化されるまで...
日常

する事がある間は悩まない

妻が病気になって以来、もし、避難生活を強いられるような地震が起きたとき、どうなるかということはたびたび考えていた。そのとき、わたしが案じるのは妻のことだけである。わたしが妻と離ればなれになって避難せざるを得ない情況に陥る確率は約35%である...
日常

楽しむことの罪悪感

妻が病気になってから一年と半年近くが経った。あの当時と比べればだいぶ穏やかな日常生活になった。いや、だいぶ日常生活を取り戻したといった方がいいか。なにしろあの当時は日常生活など無きに等しかったからだ。時に、楽しむこともできるようになった。で...
日常

そこにないもの

昼休みに近くのコンビニへ昼食を買いに行ったら、扉に張り紙がしてあった。経済産業省からの要請で節電の為に夜間の看板を消すという内容だった。残念ながら、ここの地域の電力会社は東京電力でも東北電力でもない。節電したところで、その分の電力は必要とさ...
平凡社ライブラリー

『絶対製造工場』カレル・チャペック

シリアスな話かと思っていたので買ってからしばらく積読状態だったが、いざ読み始めてみると全然シリアスな話ではなかった。そもそも、カレル・チャペックなのだから風刺的な話である可能性の方が高いはずなのに、なぜシリアスな話だと思いこんでしまっていた...
白水社

『SF文学』ジャック ボドゥ

フランスという国ではSFというジャンルはどうなんだろう。ジョージ・ウェルズと共にSFの父とも呼ばれるジュール・ヴェルヌはフランス人だし、ジャック・サドゥールの『現代SFの歴史』が翻訳されたり、ボリス・ヴィアンはヴァン・ヴォクトのフランス語翻...
日常

読めども読めども

コリイ・ドクトロウの新刊は文庫だと思っていたら文庫じゃなかったので驚いた。『マジック・キングダムで落ちぶれて』が出て以降、翻訳されなくなってしまったので『マジック・キングダムで落ちぶれて』の売れ行きが悪かったんだろうなあと思っていたからだ。...
漫画

『夢の化石』今敏

大友克洋が漫画を描かなくなってしまってからもうかなりの時が経ってしまった。大友克洋というと『童夢』や『AKIRA』とSF漫画というイメージがあるけれども、わたしにとっては『童夢』を描く以前の『ショート・ピース』とか『ハイウェイスター』とかの...
宝島社文庫

『連続殺人鬼 カエル男』中山七里

ミステリーから遠ざかっていたので宝島社の『このミステリーがすごい!』大賞にもあまり興味を持つことがなかった。『四日間の奇蹟』とか『チーム・バチスタの栄光』とか、読んでみてもいいかなという気持ちが全くなかったわけでもないけれども、結局読まずに...
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