徳間文庫

『楽園まで』張間ミカ

なんだか読んでいて気恥ずかしかった。この小説が青臭いとか恥ずかしい内容だとかそういった物だというわけでは決してない。それはわたしも作者と同じ年代のころに同じような感覚を持ち合わせていたためだ。そして、作者が物語る、素直で、一途な思いが今のわ...
ホンの話

解説

マリオ・バルガス・リョサの『世界終末戦争』を読み終えて、ヒラリー・ウォーの『生まれながらの犠牲者』とウォルター・モズリイの『ブルー・ドレスの女』を読み始める。『ブルー・ドレスの女』の方は、『都筑道夫の読ホリデイ』の中で都筑道夫が言及していた...
創元推理文庫

『悪魔に食われろ青尾蝿』ジョン・フランクリン・バーディン

いわゆる、「幻の傑作」書かれたのが1948年と今から60年以上も昔ということを考慮しなければ、ニューロティック・サスペンスであるこの物語は、それほど衝撃的でもない。二年間、精神病院に入院していた女性が退院する日から、この物語は始まる。設定が...
ホンの話

ストランドビースト

今回の『大人の科学』はテオ・ヤンセン特集でミニビーストが付録だ。付録なので小さいとはいえ、あのストランドビーストなのである。もの凄く購入意欲をかき立てられるのだが、なにしろ何の役にも立たない。家に買って帰れば、ただでさえ圧迫しつつある本の山...
ホンの話

ジョー・ゴアズ R.I.P.

1月10日にジョー・ゴアズが亡くなっていたことを知る。熱心な読者ではなかったが、1990年代終盤あたりから翻訳が止まり過去の人となってしまったのかと思っていたところで突然、『路上の事件』が翻訳され、『ハメット』の復刊や『スペード&アーチャー...
ホンの話

冒険小説が読みたい

今月は買いたいと思う新刊が少ないのをいいことに、藤本泉の『時を刻む潮』とヒラリー・ウォーの『生まれながらの犠牲者』を古書で買ってしまう。江戸川乱歩賞受賞作を集中して読んだときがあったが、その時に藤本泉は抜け落ちていた。あらすじを読んで何とな...
ホンの話

非虚構の話篇

去年の振り返りはこれでお終い。最後はノンフィクションである。『代替医療のトリック』サイモン・シン『高砂コンビニ奮闘記』森雅裕『フェルマーの最終定理』『暗号解読』のサイモン・シンの新作。さすがに一人では難しい問題があったのか、今回は共作者がい...
ホンの話

架空の物語の明暗篇

『正義のみかた』本多孝好『屋上ミサイル』山下貴光『百瀬、こっちを向いて』中田永一読み終えて、元気が出た三冊。本多孝好はそれほど読んでいないのだけれど、既読の本と比べると驚くぐらいにさわやかで、軽やか。だからといって軽いばかりの話ではなく、か...
ホンの話

謎物語篇

ミステリ小説について振り返ってみる。ここ数年ミステリよりもSFの方に比重が傾いているせいか、あまり読んでいない。少ない読書量の中で印象に残っているとすれば、軒上泊の『君が殺された街』が真っ先に上がる。残念ながら新作ではない。『べっぴんの町』...
ホンの話

空想科学小説篇

さて、去年からの続きで、2010年に読んだ本の中で印象に残った本について書いてみようと思う。対象はあくまで今年出版された物に限ることにする。『ベガーズ・イン・スペイン』に続けて出たナンシー・クレスの『アードマン連結体』。前短編集に比べると少...
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