いやあ、とにかくなかなか出なかったロバート・F・ヤングの『たんぽぽ娘』が出て、2003年、ダン・シモンズの『夜更けのエントロピー』から始まった河出書房新社の奇想コレクションがようやく完結した。
第二期の刊行予定のラインナップの最終巻として予告されながらもどんどんとその刊行が延期され、それを補うかのように新たな作品が追加されていったので、ある意味、この本が永久に出なければつぎつぎと新たな追加作品が出続けて、奇想コレクションシリーズは永久に続いてくれるんじゃないかという期待もあったけれども、テリー・ビッスンの『平ら山を越えて』で終止符が打たれ、それから約三年が経過した。
順調に刊行されていたこのシリーズだけに、最終巻だけあまりにも待たされ続けた結果、期待値が上がりすぎてしまったせいで、とうとう刊行されたというのにどうもワクワク感に乏しい。
たぶん、目玉作品である「たんぽぽ娘」は既読だったせいもあるだろうし、ヤングの作品を味わうには中途半端に歳をとってしまったせいもあるのかもしれない。いっそのこと、ボーイ・ミーツ・ガール系ばかり集めた作品集になっていたとしたら感じ方も変わったかも。『ピーナツバター作戦』のときはそうでもなかったんだけれどもね。
「ジャンヌの弓」はちょっとばかり、ダン・シモンズの『エンディミオン』におけるアイネイアーとエンディミオンとの関係を彷彿させたんだけれど、結末の付け方がシモンズとは大きく違った。そこがヤングらしいところだと思う。
表題作の「たんぽぽ娘」は今回は読まずにすまそうと思ったのだが、コバルト文庫版の『たんぽぽ娘』が手元にあるので旧訳と比較しながら再読してみた。再読だったけれどもやはり色褪せない面白さがあったのは確かだ。もっともいまさらこの歳でこの話をいい話だと感じてしまう自分もどうかしていると思ったりもする。
で、近いうちに、旧訳と新訳との差分をまとめて公開してみるつもりだ。
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