それぞれの短編に副題の付いた短編集。どんな副題かといえば「暗号と殺人」「安楽椅子と殺人」等、ミステリのサブジャンルが副題の一部になっており、作品そのものもそれにそった内容になっている。もっともそれ以上のことはないので連作短編になっているとか全部がどこかで繋がっているとかそういうことはない。
しかし、前半の作品は切れ味の良い作品ばかりで、これだけでもじゅうぶんに面白い。後半はというと短い話が多くなるので前半ほど凝った部分がなくワンアイデアのオチのある話という感じでこれはこれで悪くはない。ただやはり前半が良すぎるので後半は尻つぼみになってしまうのはしかたない。
表題作は暗号解読の話で暗号に関してはそれなりによくできているけれども一番のポイントは終盤の一撃。途中でさりげなく伏線が張られていて、まさかそこに繋がるのかというぶん殴られた気分になる。続く「年賀状・誤配」は誤配された年賀状に書かれた不穏な文面から差出人とその意図を推理するというハリイ・ケメルマンの「九マイルは遠すぎる」系の話。ちょっと牽強付会過ぎるんじゃないのかという推理が続く中で、途中でそれしかないという納得させる真相にたどり着くのがお見事。
「知る」は倒叙ミステリなのだが犯人視点ではないところがポイントで何処が倒叙なんだと思うが、これもまた伏線とそこにたどり着く過程のうまさが光る。
「愛する人へ」はこっちのほうが倒叙じゃないのかという犯人視線の物語。完全犯罪に見えた犯行が犯人のミスではなく犯人以外の人による愛情ゆえの行為から崩れてしまうところが悲しさをともなう。
最後の「緑色の池のほとり」は「怪奇と殺人」となっていて一応の謎解きはあるけれど、これだけがミステリというよりもホラー、あるいは文字通り怪奇の話。

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