新潮文庫

『エージェント6』トム・ロブ スミス

だいぶ甘く、そして切ない話だ。『チャイルド44』の時の殺伐とした情況と比べると、ソビエトという国そのものも変化をし殺伐さが薄れてきたせいか、主人公も感傷的になっている。妻をスパイとして告発しようとしたり、自分は本当に妻を愛しているのだろうか...
雑文

欠けた林檎

僕の好きなアップルってのはジョブズがいなかった時のアップルで、まあようするに、一番駄目だったときのアップルが好きだったのだ。これって一種の判官贔屓みたいなもので、というかそれ以外の何物でもないのだけれども、マイクロソフトの独占状態が気に入ら...
漫画

『土星マンション 7』岩岡ヒサエ

地球全部が保護地区となり、地表で暮らすことができなくなった未来。人類は土星のリングのような形で地上から35,000メートル上空で浮かぶ巨大なリングを作り上げ、そこで生活をし始める。設定だけをみればハードSFなのだが、そんなハードSF的な巨大...
国書刊行会

『奇跡なす者たち』ジャック・ヴァンス

浅倉久志が亡くなったとき、この『奇跡なす者たち』もお蔵入りになってしまうものだと思っていた。そして、出版リストの発売予定に上がった時も、国書刊行会のことだから実際の刊行も少し延びるだろうと思っていたら順調に刊行された。この本の題名どおり、ど...
集英社文庫

『メルカトルと美袋のための殺人』麻耶雄高

新本格派世代の中で、歌野晶午の作品に登場する信濃譲二はエキセントリックな探偵なのだけれども、それを上回るというと麻耶雄高のメルカトル鮎になるのだろう。メルカトル鮎という名前からして既に奇抜だけれども、名探偵ではなく銘探偵と名乗っているところ...
角川文庫

『不思議な少年44号』マーク・トウェイン

しばらくほったらかしにしてあったのだけれども、わりと目の届く場所におきっぱなしだったので、さっさと読むことにした。過去に日本では『不思議な少年』という題名で翻訳されていたのだけれども、実はこの作品、マーク・トゥエインの関係者による最初と最後...
出版芸術社

『死者の輪舞』泡坂妻夫

ジョイス・ポーターが生み出したドーヴァー警部は「史上最低の探偵」とも言われ、ジョイス・ポーターは名探偵がかならずしも性格が良かったり、頭が良かったりしなくても通用するということを証明してみせた。日本においても和製ドーヴァー警部と言われるキャ...
漫画

『大東京トイボックス(7)』うめ

昔から物を作るということが好きだった。だから結局今でも物を作るという事を生業として生きている。しかし仕事をするのは生活の為なので、仕事の上で作る物は誰かの為に作る物だ。誰かの為になるものを作ることであっても作ることに変わりはないので嫌いでは...
ピュアフル文庫

『封じられた街』沢村鐵

小さな町を舞台にしたダークファンタジーとくると期待をしてしまう。しかし、少し前に倉数茂の『黒揚羽の夏』が出たばかりでしかも同じ版元、同じレーベルだ。発表されたのは2009年で今回は文庫化であるとはいえ、ちょっと短期間に出過ぎという気もしない...
講談社文庫

『小さなトロールと大きな洪水』トーベ・ヤンソン

ムーミンシリーズは八冊だといわれていたけれども、実はもう一冊、エピソード0とでもいうべき『小さなトロールと大きな洪水』という話があった。しかし今までは、講談社文庫には収録されてはおらず、青い鳥文庫にだけ収録されていたので少しばかり収まりが悪...
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